7インチ筐体, フルHD, Win10 搭載の最小最強モバイルパソコン GPD Pocket の使い勝手をレビュー

UMPC(ウルトララモバイルパソコン)という言葉をご存知だろうか? PC 歴が長い人なら知っていることと思うが、今から 10 年ほど前に 5 インチ〜7インチクラスの極小モバイル PC が流行った時期がありました。まだ Windows Vista 全盛期の大昔の話です。

PC バカなので当然のように UMPC の代名詞とも言うべき機種 FMV-BIBLO LOOX U/B50 を購入しました。SD カードなど含め一通りのインタフェースを備えているため、いざという時のために未だに売らずに持ってますが、まぁ実際の使用頻度は察して知るべしという程度。あの頃の CPU - Atom は演算能力が非常に貧弱で正直使い物にならなかったと言っても過言ではなかった。ブラウジングが精々いいところなので買ったはいいものの直ぐ売っちゃったり、押し入れの肥やしにしてた人も多かったことかと思います。

一周して再びブーム到来。ここ近年 UMPC が再び密かに盛り上がりつつあります。今から 1 年版ほど前に一部のマニア向けではありますが、世界最小最強のゲーミングモバイル PC として登場した GPD WIN が盛り上がりました。購入するかかなり迷ったけどゲームはしないという結論に達し購入は見送りました。

そして今年 2 月のこと、あの GPD から新たな UMPC として GPD Pocket が発表されました。当然 PC マニア界隈では話題沸騰。7インチ筐体、フルHD、8GB メモリ、eMMC 128GB、Atom Z8750 というそこそこ使えそうなスペックで、OS は Win10 か Ubuntu が選べる凄いやつ。見た目もクールだったので、今回は発表後すぐに購入することを決めてクラウドファンディングサイト Indiegogo で出資することにしました。

GPD Pocket が出荷され届くのを心待ちにする日々が続いたのですが、そこはクラウドファンディング。想定していた通りトラブル続きで予定された出荷時期はどんどん遅れた。そして大概こういうのは忘れた頃に届くもので、夏期休暇前にひょっこり届きました。一週間ほど使い倒してみたのでレビューしてみます。

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GPD Pocket のスペック

GPD Pocket のスペックを抜粋してみました。同じようなサイズで競合製品はみあたらず、8 インチクラスのタブレットに着脱式のキーボードを接続する製品が競合になりえるだろうか。あえて言うならキングジムのポータブック XMC10 だろうか。そんなわけで少々上位機種と言うことで Surface pro と XMC10 のスペックも参考までに併記します。

クラウドファンディングの Early-bird なら $399 で手に入りましたが、今日本で手に入れようとすると概ね 6〜7 万円程度になります。その価格帯で考えてもメモリ 8GB、ストレージ 128 GB というスペックは魅力的だと思います。

GPD Pocket Surface Pro(最下位機種) ポータブック XMC10
OS Ubuntu 16.04 LTS
or
Windows 10 Home
Windows 10 Pro Windows 10 Home
CPU Atom x7-Z8750 Core m3 Atom x7-Z8700
GPU Intel HD Graphics 405 Intel HD Graphics 615 Intel HD Graphics 405
RAM 8GB 4GB 2GB
ストレージ 128GB eMMC 128GB SSD 32GB eMMC
解像度 1920 x 1200 2736 x 824 1280 x 768
液晶サイズ 7 inch 12.3 inch 8 inch
サイズ 180 x 106 x 18.5mm 201.4 x 292.1 x 8.4mm 204 x 153 x 34mm
重さ 480g 768g 830g
連続使用時間 12h 13.5h 5h
インタフェース USB Type-C 3.0 x 1
USB Type-A x 1
micro HDMI x 1
3.5mmオーディオジャック
USB 3.0 x 1
SDスロットx 1
Mini DisplayPort x 1
3.5mm オーディオジャック
Surface Connect x 1
USB 2.0 x 1
SDスロットx 1
Mini DisplayPort x 1
HDMI x 1
VGA x 1
3.5mm オーディオジャック
amazon価格 65,000円 96,800円 26,164円

GPD に対するちょっとした愚痴(不信感)

日本向けには 6 月下旬あたりから出荷が始まりました。初回ロットはいろいろな不具合が報告されたため、すぐに出荷一次停止となり問題修正期間が長々と続きました。僕は早々に出資したにもかかわらず何故だか初回ロットから漏れたため、結果オーライではありますが不具合のない個体が届くことになりました。

GPD の出荷通知は日本では考えられない方式で、出荷済の Pledge ID(いわゆる Order ID みたいなもの) 一覧が記載された excel ファイルが共有されます。ID から個人は特定できないものの日本の常識では考えられない通知方法です。それでいて待てども待てども自分の ID は記載されず、自分よりも後の ID が次々に記載されていくばかりか、Ingiegogo 以外の注文に対しては出荷してるっぽいし、挙げ句の果てには Amazon でも手に入るようになり、流石に加減腹が立ったので Campaigner に英語で問い合わせをしたところ、一週間後にいきなり商品が届きました。

ちなみに、その後も通知されてくる excel には自分の Pledge ID が記載されることはありませんでした。超適当すぎる。まぁそんなわけで、未だ届いていない方がいらっしゃるようでしたら、一度英語で問い合わせると良さそうです。

本当は、出荷通知を元にトラッキングを追いかけて自分が受け取ろうと画策していたのですが、心の準備(というか奥さんに黙って購入してた)ができていない状態でいきなり家に届いたもんですから、まぁ大変でした。

『なんか GPD って書いてある箱が届いたよ?何これ?』

って言われましても・・・

『パソコンだよ、パソコン。すんませんパソコン買いましたっ!』

って心の中で叫ぶのが精一杯。とりあえず数日箱を開けずに放置しておきました。www

ちなみに佐川急便で届きました。

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GPD Pocket 開封の儀

比較的質感のより化粧箱です。とても $399 とは思えない。何故だかイヤホンだけ箱から飛び出した状態で同梱されてました。

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同梱物は、本体、ディスプレイ保護シート、USB AC アダプタ、USB Type C ケーブル、マニュアル、イヤホン。イヤホンは iPhone 付属のイヤホンにそっくりだけど音質的にもパチモンです。届いてない人もいるっぽい?ので遅れてごめんねということだろうか。

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コンセプトがポケットに入ると言うことなので本当に手のひらサイズ。背広の内ポケットには入るだろうが、ズボンのポケットに入れるのは流石に無理。パッと見はかなり Macbook を意識した色。質感もアルミ素材なのでそっくり。

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裏面はこんな感じ。裏も Macbook をかなり意識したデザイン。

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Macbook Pro 15 と比較してみるとこんな感じ。色も質感もマット感もほぼ全く同じ。よくもここまで似せて作れたものだと感心するほど。だがそれで良い。

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液晶ディスプレイをオープンしてみた姿。最初に保護シートが付けてありますが、この紙の保護シートはこの時点では取らないのがベター。

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付属のディスプレイ保護シート貼り付けは蒸気を満たしたお風呂で決行しましたが、見事に何カ所かにホコリが混入してしまい残念な結果に。写真では綺麗に貼れてるように見えますが超気になる位置にホコリが混入してます。そもそも喜び勇んで紙の保護シートを風呂に入る前にとってしまったのが間違いでした。Amazon で換えの保護シートが売ってはいますが、我慢して当分このまま使うことにします。

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変態的な配置のキーボードは慣れない

GPD Pocket の売りのひとつでもあるキーボード。デスクトップ PC のキーボードのキーピッチ(キーの大きさ)は 19mm が一般的で、モバイル PC は 17〜18mm が一般的ですが、GPD Pocket は 7 インチというサイズでありながら主要なキーは 16mm のキーピッチを確保しています。

実際確かにキーそのものは押しやすい。人によっては慣れればブラインドタッチもサイズ的には問題ないと言えるでしょう。逆に LOOX U の時に活用していた親指うち(両側面で支えて親指で入力する打ち方)は、僕の小さな手ではちょっと無理です。ちょうど G のキーの列が打てません。

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ただ一週間経っても慣れないのが変則的なキー配置。しかも JP キーボードの配置じゃないので、ますます混乱します。日本語カナ変換は「Ctrl + ESCの隣の~」を押すことすらわかりませんでした。US キーボードを普段使いしてる人ならすぐ慣れそうな配置ではありますが、僕はブラウインドタッチは一生できる気がしないです。

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開封直後でいきなり PC が起動しなかった

失敗したディスプレイ保護フィルム貼りに続き、いきなり PC が起動しません。30 分経っても GPD と表示された画面から先に進まないです。

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仕方が無いので電源長押しで再起動を試みると Repair が表示されました。ほんまちゃんと起動するんかいな?と不安になりましたが、Restart 後は普通にセットアップ画面が表示され、無事セットアップも完了しました。

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液晶品質はかなり良い

セットアップが完了し無事にデスクトップが表示されました。いきなり出だしで躓きまくりでしたが、ディスプレイの品質はかなり良い感じです。Macbook Pro 2012 Mid と色温度は違うものの同じくらい発色が良いなーと思って調べてみると、マイナビニュースのレビューによれば sRGB 比は 90.6% もあったとのことです。実際 Lightroom で発色調整する用途でも十分実用に耐えてます。

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こころなしか Macbook Pro 15 - 2012 Mid よりも発色が綺麗な気がしたので液晶チェック画像を表示させてみて比較してみました。気のせいじゃなくて GPD Pocket の方が暗い部分の階調が滑らかかつ正確に表示されているように見えます。

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ちなみに液晶を最大限開くとここまで倒すことができますが、構造上本体が少々浮いてしまいます。もっとも液晶パネルの部分が下になるだけでグラつくことは全くありませんが、擦れて摩耗するのが嫌だという意見もちらほら見受けられます。個人的には使ってなんぼなので多少の傷は全く気にしません。

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蓋が擦れないギリギリまで開いた場合は概ね 30 度程度といった感じでしょうか。普通に使う分にはこの程度の倒し具合がよさげです。

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インタフェース類はちょい不満あり

インタフェース類は右側に集中しています。USB 3 Type C は AC アダプタからの電源供給と考えてほぼ良くて、USB 機器をつなぐ場合は、ほぼほぼ Type A 端子を使っています。micro HDMI 端子は外部ディスプレイを持っていないので全然使いません。不満点を揚げるとすれば、どうしても欲しかった micro SD カードスロットがない点。デジカメを頻繁に使うタイプの人間なので USB 経由でデータ転送が遅くてつらいです。加えて SIM スロットがあれば最高でした。

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充電は思ったより持ちが悪いと思った

フル充電の状態で Photoshop や Lightroom を使い続けていると 3 時間ほどしかバッテリーが持ちませんでした。公称値の 12 時間にはほど遠い感じですが、CPU パワーをバンバン使うし、CPU ファンも前回で回り続ける感じだったので、高負荷状態だと 3 時間と思っておくのが良さそうです。

加えて気になるのが廃熱。高負荷状態だと本体はかなり熱くなります。特に右側のファンから出てくる熱風はかなり熱いし、キーボードに添える右手も結構熱いと感じるる気になりまくり。

一方の充電について。GPD Pocket は USB Power Delivery 2.0 に対応しています。付属の USB-AC アダプタは入力100-240V、出力5V/3A、9V/2.67A、12V/2A です。ほぼ空の状態からフル充電までおおよそ 3 時間ほどかかります。あと注意すべきなのが USB PD 非対応の USB アダプターや USB ハブなどから給電すると、かなり充電速度が遅いという点。試しに PC を使いながら普通の USB ハブで給電してみたところ、給電電力より使用電力の方が大きいという結果になりました。

そして最後にもうひとつ注意すべき点があります。GPD Pocket は給電しながら PC を使うことを推奨しておらず、非給電状態で PC を使って欲しいそうです。実際給電しながら PC を使っているとかなり熱を持ちます。なるべくこのルールは守った方が良さそうです。

Office Mobile が無料で使えるのが凄い

Microsoft は個人利用の範疇の場合に限り無償で利用できるモバイル端末向けの MS Office として Office Mobile をリリースしています。モバイル端末向けと聞くと iOS 端末や Android 端末を思い浮かべてしまいますが、Windows タブレット向けの Office Mobile もリリースされています。いろいろ制限があるけど要約するとこんな感じ。

  • 非商用の個人利用であること(利用する場所、時間帯、デバイスの所有権を問わず、業務目的または収益を得ることを目的とした活動は NG )
  • 10.1 インチ以下の iOS/Android/Windows 端末

この定義に則ると、iPad Pro 12.9 インチは NG です。そして GPD Pocket は 7 インチなので無償対象内端末となります。Office Mobile は Microsoft のこちらのページからダウンロードできます。Excel, Word, PowerPoint, OneNote, Outlook と一通りの Office が利用できますので、個人利用目的ならこれを利用しない手はないでしょう。

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Atom x7-Z8750 はやはり非力

一週間、いろいろと使ってきましたが、終始痛感したのは Atom x7-Z8750 のスペックの低さ。やはり Atom は Atom だと改めて認識する結果となった。もちろんブラウジングする程度の使い方ならサクサクなんですけど、Photoshot や Lightroom といった画像編集系ソフトを扱うにはかなり待ち時間が発生してイライラします。Excel もちょっと大きなシートを開くと重くてイライラします。

で一番イライラするのは Dropbox の同期がとても重いと感じること。Dropbox のヘビーユーザなので 20GB 程度しか同期しないようにフォルダ選択して使ってるんですが、Windows の起動直後から Dropbox がインデックスを構成して利用可能になるまでに最低でも 5 分程度もかかります。スクリーンキャプチャを共有したいだけなのに、即座にできないのはかなりストレスがあります。

まとめ

なんだか後半に行くにつれて不満が多くなってきましたが、GPD Pocket のモビリティーと自分の普段使いの用途でも最低限使えるスペックを両立させている点は他にはない強みと感じています。実際今回の帰省には GPD Pocket しか持って行きませんでしたが、それなりに活躍してくれました。一方で実際使った感想では、持ち運びサイズを気にしなければ New Surface Pro を買った方が幸せになれると思う次第。

もし GPD Pocket が欲しいなーと思ったら Amazon で買うのが最も早く入手できる手段です。最安で購入したいなら Gearbest など使うと良いですが、海外のネットショップに馴染みがないなら Amazon が便利かと。

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